「アサシンズ」の背景


この伝承の舞台となった「暗殺者の谷」はカスピ海沿岸のエルブルズ山脈奥深くにあった「アラムート(鷲の意)の砦」だと言われています。

イスラム教スンニー派の異端であるイスマイリ派のさらに異端とされるニザリ派(ニザリ教団)が11世紀〜13世紀にかけてこの地で活動していたとされています。ニザリ派は他派との思想の相違から迫害を受け対立します。これに対してニザリ教団の指導者は奇襲・暗殺といった少数での対抗手段を用いたのです。
砦の主であるハッサン・サバーは教団の砦の頂きに「秘密の花園」とよばれる人工の楽園を作り、屈強な若者にハッシシ(大麻樹脂)を飲せて昏睡させ、砦にさらってくるのです。
目覚めた若者はコーランに描かれたような楽園に驚きつつも、夢のような暮らしに耽溺します。
やがて、この暮らしに慣れた頃、再びハッシシで意識を失わせ外に連れ出します。
若者は聖典の楽園から現世に戻ったことに絶望し嘆きます。
暫くたった後に指導者は再び彼の前に現れ、楽園に戻りたいかと問うのです。勿論若者は戻りたい。そして楽園への代価として暗殺者になることを迫られます。
 
 

ハッシシの多福・幻覚等の作用と人工楽園・コーランの教えを利用し、「暗殺者になってもアッラーの教えに背いたことにはならない。むしろ邪教を排斥するのだから良い事だ」と洗脳したようです。

史実としては暗殺集団がどこまで本当か不明ですが、イスラム教の分裂による内乱やニザリ派がこの地に築いたことは確認されているようです。

この「アラムートの砦」はマルコ・ポーロの『東方見聞録』にも取り上げられています。
また暗殺者という意味の「アサシン」は「ハッシシ」が語源と言われており、暗殺集団がいかに広域で恐れられていたかを知る事ができます。